所北トピックス2023
No78 早稲田大学の所沢キャンパスで脳実習してきました
12月19日に早稲田大学の所沢キャンパスで人間科学部の健康福祉学科の榊原伸一先生の指導のもと、脳の実習をしてきました。
参加生徒は32名で主に1年生の理数科の生徒でしたが、2年生の看護系進学希望者や3年生の進路が決まった者も参加しました。
3年生のうちの1名は4月から人間科学部に入学予定の生徒です。
実習はまず、ブタの頭部(下あごは付いていない)から脳を取り出し。外観を観察します。
脳を覆っている最外層の硬膜(こうまく)という薄い膜ごと取り出します。
眼球の角膜・強膜、脳の硬膜は由来が同じとのこと。
実は発生学的にも眼球は脳の出先機関なのです。
どれも確かに薄い膜でしたが、「強」や「硬」という漢字が使われているだけあって、そう簡単に切ったりちぎったりできる程、柔らかいものではありませんでした。
動物の身体ってちゃんと頑丈にできているのですね。
続いて、脳の底部から出ている末梢神経(脳神経)やクモ膜下腔の血管の様子を観察しました。
脳を包んでいる膜は外側から硬膜、クモ膜、軟膜となります。
同時並行でマウスの脳を低温で薄く切り、切片をつくり、ニッスル染色し、大脳や小脳の様子などを顕微鏡で観察しました。
細胞を形態で識別し、構造から機能を考えることは大切なことです。
機能から形態を考えることが「設計」で、形態から機能を考えることは「形をよむ」という分析手法の一つを実物から学んだことになります。
昼は早稲田の学生さんと混じって学生食堂で昼食をとりました。
偶然にも理数科の卒業生から声をかけられました。
学部の3年生で認知科学を専攻したいとのことでした。
所沢北の制服の集団を見て懐かしくなったようです。
No77 落ち葉拾いを行いました。
12月20日(水)に落ち葉拾いを行いました。
所北の恒例行事として年に2回行っています。
学校の敷地内だけでなく、周辺道路やお隣の市民体育館の方まで広範囲に渡って葉を集めます。
今年は天候にも恵まれ、大量の葉を集めました。
学校周辺にはイチョウの木がたくさんあります。
イチョウは、葉の表面にクチクラという透明な膜が発達している植物の一つです。
クチクラはワックスを主成分とするため滑りやすいので、この時期になると天気予報などで注意を促すような話題で見聞きするようになります。
クチクラを形成する植物はイチョウだけではありません。
落ち葉の上を走ったり、自転車で通過するときは気をつけましょう。
ちなみに、植物のクチクラには水分の蒸発を防ぐといった葉を保護する役割があることで知られていますが、その構造については、まだ明らかになっていないことが多いそうです。(参考:クチクラ構造モデルに関する発見)
No76 期末考査が終わりました。
先週、4日間の日程で組まれていた2学期の期末考査が終わりました。
多くの生徒が自習スペースで朝のSHR前や放課後など、早朝から下校時間ギリギリまで学習に励んでいました。
所北生の皆さん、日ごろの学習の成果は発揮できたでしょうか。
勉強は日々の積み重ねが重要だとよく言われます。
「この前の授業で曖昧だったところを振り返っておこう」「問題演習をして単元に対する自分の理解度を確かめておこう」などなど、自分なりの課題を意図的に意識できると効率的です。
迷ったり悩んでいるときは、先生や友人など頼れる人に相談しましょう。
言葉にすることで頭の中が整理されるかもしれませんし、人の意見を聞くことでヒントが得られる可能性があります。
考査は終わりましたが、自習スペースでは今日も勉強する生徒の姿がありました。
大学受験を控えている3年生と、中には1,2年生も混じっているようです。
自学自習が習慣化していることは素晴らしいことですね。
No75 理数科サイエンスセミナー実施報告
令和5年12月13日(水)、理数科の1・2年生対象にサイエンスセミナーという講演会を実施しました。
これは年に2回、理数系の専門家を招いて、高校の範囲を超えた内容について知見を深めることを目的として実施しているものです。
今回の講師では東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻准教授の合田隆先生をお招きしました。
演題は「でたらめ」が役に立つ?!というものでした。
先生は工学部でモンテカルロ法というアルゴリズムについての研究をしており、そのモンテカルロ法の根底にある考えは、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」と言うもので、とにかく「でたらめ」な試行を繰り返すことで目的を達成しようとするものだそうです。
信じられないかもしれませんが、ビッグデータ時代におけるAI技術の基盤を支えるもので、広く用いられいるとのことです。
んーさようですか。
「正確なデジタル技術」を支えているのが「でたらめ」とは意外でした。
「でたらめ」とは、つまり乱数のことです。
どのように「でたらめ」を作り出せばよいのか。
また、「でたらめ」を超える方法はないのか、についての話しに生徒から質問がでていました。
たくさんの質問が出ることはいいことです。
こうした機会に質問力を高めましょう。
加えて先生からは、高校生活を送る上での心構えや日々のすべての授業の重要性にも言及いただきました。
ありがたいことです。
来学期の末には2回目のサイエンスセミナーを計画しています。
文学部の哲学科を卒業後に医学部で学び、女流作家でもある脳神経内科医の先生に来ていただくことになっています。
「幽体離脱」や「金縛り」にも触れるかもしれません。
どんな話になるか今から楽しみです。
No74 美術部の作品が校内に展示されました。
冬休み前のこの時期に、校内で美術部の作品が展示されています。
どれも力作ばかりで、部員一人ひとりがどれほどの時間をかけていたのかや、作品を仕上げるまでにどんなドラマがあったのかなど想像するだけで感動します。
ひと目でグッと惹きこまれる奥行きのある作品がありました。
構図やテーマなどの背景がよく練られた見ごたえのある作品がありました。
大胆な筆遣いで迫力ある作品がありました。
繊細で温かみのある作品がありました。
どれもそれぞれに味わい深く、心から楽しませていただきました。
今回は外部に公開していないのですが、今後そんな機会があったら素敵ですね。
この展示会、ぜひ多くの所北生にご覧いただきたいと思います。
No73 探究活動についてフォーラムに参加してきました
12月9日(土)に東京大学生産技術研究所内のコンベンションホールにて開かれた次世代育成フォーラムに参加しました。
未来社会をデザインできる人材の育成ー初等中等教育における探究活動の成果とこれからー
というタイトルのものでした。
まず開会行事では、東京大学の副学長の開会挨拶や昨年度から探究活動のテーマ設定で指導していただいている東京大学生産技術研究所の大島まり教授の趣旨説明、文部科学省の探究活動担当の学校教育官の来賓挨拶がありました。
その後の基調講演では、国立教育政策研究所や経済産業省からの講演があり、話題提供として同じく本校の探究活動の指導に関わっている川越至桜准教授などから話がありました。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のプロボノ活動は今後に連携を模索したいと思わせるような内容でした。
プロボノ(pro bono)とは、職業上のスキルや経験を生かして取り組む社会貢献活動のことだそうです。
ラテン語の「Pro bono publico(公共善のために)」が語源といわれています。
そういえば、意外と大学教授なども高校生と話すことを苦にしない傾向があるように思います。
未来への投資と位置付けているからなのでしょうか。
こうしたフォーラムに参加し、情報収集することで、理数探究や理数探求基礎および総合的な探究の時間の充実に向けて郊外の組織(大学・研究機関や卒業生)と連携を「探究」中です。
考えてみると各教員の教員免許は各教科についてのものです。
それぞれの教育法は学んできましたが、多くの教員が探究そのものの手法やテーマ設定、探究の指導については手探りの状態ではないでしょうか。
前述の川越先生がおっしゃっていました。
「探究」をみんなで「探究」して知恵を出し合っていくことが肝要であると。
なお、当日の模様は後日YouTube「ChannelONG」で公開予定だそうです。
No72 東京大学 高校生と大学生のための金曜講座受講報告
去る12月1日は先端科学技術研究センターの都築怜理先生による講義でした。
まずは流体力学の基礎の話からです。
物質の三態のうちの液体と気体を合わせて流体といいます。
流体には粘性(粘り強さ)があります。
粘性には、
①せん断粘性 横ずれ方向の粘性
②体積粘性 体積変化に対する抵抗
③回転粘性 回転方向の粘性
の3種類があり、非圧縮性流体の支配方程式として、
①質量保存則
②運動量保存則
③エネルギー保存則
④状態方程式
があります。(私はこのあたりから「おいてかれる」感がでてきました)
その後は流体シュミレーションの話題に移りました。
都築先生のhttps://www.satoritsuzuki.org/galleryで検索してGALLERYを見てください。
息をのむような動画が現れます。
期末考査前でしたが2名の1年生が参加しました。
大学合格の後の世界を垣間見ることはモチベーションの維持につながります。
中学生の時に高校生活を想像できなかったように、今は大学生活や研究室(ゼミ)所属などイメージがつかめないでしょう。
それなら大学の講義を受けてみましょう。
面白がる自分に出会えるかもしれません。
というわけで今年の金曜講座はここまでです。
次回は来年、「西洋中世に発見されたあの世ー煉獄とは何か」
どんな内容か楽しみにしていて下さい。
No71_人権教育講演会(2年生)
11月に2年生を対象として、性の多様性・LGBTQをテーマとした人権教育講演会が行われました。
以前からあった社会課題ではありましたが、近年、特にこうしたトピックについてメディアを通して、よく見聞きするようになりました。
講演の中で性の4要素(身体的性・性自認・性的指向・性表現)について紹介されました。
この4つの要素の組み合わせや認識は単なるパターンではなく、個人によって多様であり、様々なグラデーションがあることが語られました。
また、最近行われた性別変更に関する訴訟等の話題についても触れていただき、性のあり方やLGBTQ当事者が直面している問題について主体的に考えることができる大変貴重な機会となりました。
講演の後には、生徒から多くの質問が飛び交い、様々な視点や立場に立った講演者からの回答を受け、学びを深めることができました。
No70 東京工業大学のフォーラムに参加しました。
11月25日(土)に東京工業大学の大岡山キャンパスで「理工系ライフと将来」というテーマの女性活躍応援フォーラムに参加してきました。
対象は女子中高生でした。
まずは物質理工学院応用化学系分子創成分野の中島裕美子教授による基調講演がありました。
化学は日常の生活のあらゆるものの「ものづくり」に深くかかわっているそうです。
たとえば化粧品 医薬品 自動車(タイヤ 塗料 座席カバー 燃料) 食品添加物 衣料 接着剤 PCやスマホの液晶 ・・・などなど数え上げるときりがありません。
伸びないゴムと伸びるゴムをつくり分けたり、豊富にある鉄などの金属を用いての触媒開発ができるそうです。
究極のものつくりとは「原子を選んで並べるこ」とあるいは「原子を制御すること」であるとのこと。
それによって生活を潤うおわせることができます。
次に5名の女子学生(学部生、修士、博士)と卒業生によるパネルディスカッションでした。
進路選択や学生生活、奨学金や短期や長期の留学などの体験談語られました。
その中で印象的だった内容は、「女子枠」での入学があることをチャンスと捉えてpositiveに活用してほしいと話していたことです。
1人の修士の女子学生はAO入試(現在では総合型選抜)で学部に入学したそうですが、ある友人から「裏口入学」のように思われていたそうです。
女子枠設定以前から「多少の偏見」があったとすれば、嘆かわしいことです。
「女子枠」というものが広く知られることを望みます。
よく言われますが、進んだ道を正解にすればいいし、結果、成功につなげてしまえばいいのです。
得意なことより好きなこと、人間は興味を持っていることなら、やり続けることができます。
例え研究することが苦しかったとしても、興味のある分野のことであれば、その分だけ楽しむことができます。
学生生活は、一つのことに集中できる贅沢な時間です。
できることならあの頃に戻りたい。
さて、来年の春にソメイヨシノが花を咲かせるころ、本校の3年生たちはどの大学のキャンパスに立っているのでしょうか。
ちなみに校内に桜並木がある大学は珍しいそうです。
確かに東大は銀杏並木ですね。
No69 科学館プレゼン研修を行いました。
10月30日(月)に理数科の2年生がお台場の日本科学未来館を訪れてプレゼンテーション実習を行いました。
まず午前中に常設展示を見学し、プレゼンテーションしたい題材を探して決めます。
決まったところから、その発表のための準備となります。
食事をはさんで午後は5人ずつ8班に分かれて1人ずつ発表し、その場で未来館の職員の方の助言・指導を受けました。
発表時間以外のところでは、グループ内での振替を含め、各自で展示についての学習を深めたり、自由見学などを行い、最後に全体の活動の振り返りと指導講評を受けました。
せっかく自分で調べたことでもあり、すべてを伝えたくなることろですが、発表時間内で伝えられることは限られてしまいます。
そこで、話す内容を精選し、伝えたいことを伝えるということが求められました。
今回の実習を通して、その難しさやコツ、といったものが学べたのではないでしょうか。
現2年生から思考力・判断力・表現力の育成が求められるようになりました。
当然のことですが先進的な研究は多くの場合、1人の作業ではなくチームで行われます。
得意分野を活かし合うためにはフォロアーシップやプレゼンテーション能力育成がこれまで以上に重要となるということです。
正解が無い、あるいは正解が複数ある問にに対してどう向き合って組織としてどう対応するか。
集合知としてどう機能させるかが大事なのです。
皆さんはこれまでinput重視の学習は多く経験してきました。
今後はoutputの経験もたくさんしましょう。
積み重ねた分だけ上達するはずです。
No68 実施報告 理数科体験授業
令和5年11月11日(土)に本校を会場として数学・物理・化学・生物の4分野で理数科体験授業を実施しました。
約90名の中学生とその保護者が来校し、高校での授業の雰囲気を少しだけ体験しました。
いかがでしたでしょうか??
今回実施した授業のテーマは以下の通りです。
数学:虚数への戦略(ストラテジー)
物理:光通信
化学:どこまで続くの? 長~いナイロン
生物:生命の誕生
来年度入学する1年生は理数科9期生となります。
今回は「お客さん」でしたが入学したら授業も部活動も所北の「生徒」になります。
夏の臨海実習や大学・研究機関の実習など準備しています。
もちろん課題研究も2年次と3年次の2年間にわたって実施することができます。
学力検査は傾斜配点です。数学と理科に力を入れて勉強しておいてくださいね。
待っています。
No67 サボテンの花とウニ 生物室の様子
生物室のサボテン(たぶんエキノプシス属)の花が咲きました。
多肉植物であるサボテンはCAM植物なのでCO2固定経路が通常のC3植物とは異なります。
その右はオリヅルランです。
走出枝(runnner)を伸ばして無性的(花と実を経ずに)に増えます。
海水の水槽にはアカウニとムラサキウニとバフンウニとイトマキヒトデなどがいます。
水槽下方に骨格だけになったウニの遺骸は、とある捕食者の仕業ですが、分りますか??
犯人はヒトデです。
No66 海外日本語教師が来校しました。
令和5年11月2日(木)に29ヵ国から41名の海外日本語教師の方々が来校しました。
英語や地理、生物などの授業を通して生徒との交流を行い、放課後には茶道部による茶道体験がありました。
日本語教師の方からは、高校生とお互いの国のことを紹介し合う中で日本の文化を改めて知り、とても勉強になったとの感想をいただきました。
国による違いは多くありますが、共通することもたくさんあります。
本校の生徒にとっても日本以外の国のことを知る貴重な機会となりました。
No65 2学年が修学旅行に行ってきました。
令和5年10月3日(火)から4日間の行程で修学旅行が行われました。
今から4週間ほど前のことですが、生徒の皆さんにとっては遠い昔のようでしょうか。
それとも昨日のことのように思い出せるでしょうか。
1日目は広島県の平和記念公園を訪れ、ガイドから被爆についてなどの話を聞きながら碑巡りをしました。
その後は、クラスごとに代表者が誓いの言葉を述べて平和セレモニーを行い、平和記念資料館を見学しました。
事前に行った平和学習で被爆体験伝承者の話として聞いたことと重なる部分が多くあったので、様々に学び取ることができた貴重な時間となりました。
2日目は、まずは宮島を訪れたあと、広島・神戸を班別研修としてそれぞれ計画した行程で1日行動し、新神戸に集合し、淡路島のホテルへ移動しました。
3日目は渦潮クルーズ、うどん作り、ケーキづくり体験、道頓堀散策など、各自で選んだ体験学習をグループごと行い、クルーズ船でビュッフェ形式の夕食をとりました。
4日目はバスで京都へ移動し、半日散策しました。
連日大きな移動を伴いながらの旅行となりましたが、各地での経験は非常に充実したものとなりましたね。
先日行われた事後学習において、この旅行の思い出を短歌に込めて表現しました。
比喩や体言止め、反復法など、これまでに知り得た様々な技法を駆使して言葉に緩急をつけながら修学旅行中の思い出を綴りました。
修学旅行を終えると、どこか一区切りといった雰囲気がありますが、皆さんの心境はいかがでしょうか。
ぜひ、今回の旅行での経験を糧にして、これからの学校生活に励んでほしいと思います。
No64 早稲田大学生命科学系シンポジウムに参加しました。
令和5年10月28日(土)の午後に、早稲田大学東伏見キャンパスで人間科学学術院生命科学系シンポジウム「脳の不思議と人間の進化」が行われました。
高校生~大学学部3年生くらいを対象にしたこの企画は、未知の脳の働きや人類の進化との関係など、これから大学で神経科学、生物学、医学を学ぼうとしている高校生に刺激を与え、これからの生命科学に興味が持てるような内容でした。
講師を務めるのは各分野の著名な先生方であり、全ての講演は高校生が理解し興味を持ちやすい内容(専門的すぎないように)になるように工夫されていました。質疑の時間などには生徒が積極的に疑問をぶつけていました。
岡山大学の解剖学の川口綾乃先生からは、神経幹細胞とそこから非対称分裂によって分化した細胞の「移動」の話がありました。
動物の細胞ですからニューロンも動くのです。
幹細胞(stem cell)と分化(differentiation)した細胞の違いは分かりますね。
もやっとした生徒は生物室まで来てください。
独協医科大学の脳神経内科医でもあり作家でもある駒ケ嶺朋子先生からは、擬死(死んだふりをすること)や臨死体験、体外離脱、魂の概念などといった人間科学科のコンセプトに合致した内容の講義でした。
先生は早稲田大学の文学部を卒業後に医師になった変わった経歴の先生です。
先生によると右脳の側頭頭頂結合部(そくとうとうちょうけつごうぶ)の不具合で体外離脱の感覚が生じることが実験で示されているようです。
スポーツなどの極限の状況でも自分を上から見ている体験は起こりやいすそうです。
文系だか理系だか医系だかオカルト系だかわからなくなりそうですね。
東京大学理学系研究科の鈴木裕宣先生からはヒトの脳の肥大化とガンになりやすいことは、実は関係があるのではないかという内容でした。
確かにニューロンが増えることとガン細胞が増殖することは共通点がありそうですね。
同じく東京大学理学系研究科の太田博樹先生からは「ヒトの進化と脳の謎~なぜネアンデルタール人のゲノムを調べるの?」という演題で、絶滅した化石人類の説明や骨から縄文人のDNAを抽出する話がありました。
私たちはネアンデルタール人から遺伝子をかなりの割合で受け継いでいるようです。
各先生からはご自身の高校時代や研究職を目指した動機などのエピソードが語られ、生徒が触発されるコンテンツが多くみられました。
世の中には一つのテーマにこだわって、一生をかけて面白がって研究をしている大人がけっこうたくさんいるのですね。
大変ためになったシンポジウムでした。
No63 東京大学 農学部公開セミナー
10月21日は東京大学のhome coming dayでした。
その一環の行事として農学部の弥生講堂一条ホールで公開セミナーが開かれました。
テーマは「GXってなんだろう?」
まずは語句説明
・DXはデジタルトランスフォーメーション・・・デジタル技術で「社会や生活の形を変える」こと
・GXはグリーントランスフォーメーション・・・温室効果ガスの排出削減を目指す取り組みを、社会全体の変革につなげようとする活動
応用生命化学専攻の鈴木道生教授からは、バイオミネラリゼーションつまり生物が鉱物を生体の内外に生成する現象についての講義でした。
いまさらですが脱炭素技術の開発が世界的に重要な課題になっています。
地球上で最も多い炭素の化学形態は炭酸カルシウムであり地球上の存在量の8割が石灰岩中にあるとされています。
何が言いたいかというとその石灰岩の生成の溶剤をほんの少し変動させるだけで大気中の二酸化炭素の挙動が劇的に変化する可能性があるそうです。
真珠を作るアコヤガイが炭酸カルシウムのバイオミネラルのモデルとして紹介されていました。
北海道演習林の尾張敏章准教授からは、広大な演習林を「林分施業法」という手法を用いて持続可能な森づくりの紹介がありました。
樹木の密度や種類・大きさ、天然更新の良否などでいくつかの森林のタイプ(林種)に区分し伐採や造林(施業)を各林種の林分状況に応じて行う手法だそうです。
その森林管理の手法としてDXが進められているとのこと。
それは眼を見張るものがあり、例えば、地理情報システム(GIS)、全球衛星測位システム(GNSS)、レーザー計測(LiDAR)、無人航空機(UAV)ドローンなど、林業は最先端技術によって支えられているようです。
暗くなりましたが安田講堂前で記念撮影を撮りました。
一条ホールは一条工務店が作ったそうです。
木のぬくもりが感じられる会場でした。
農学部関連のイベントとして、
ハチ公生誕100周年(農学部公開セミナー特別企画)「ハチ公学〜ハチから広がる学の世界〜」
が11月4日に行われます。
会場は東京大学農学部1号館2階 第8講義室(第「ハチ公」義室とのこと)
受講希望者は生物室まで申し出てください。
No62 東京大学金曜講座 受講報告
10月20日(金)の講義は学際科学科の舘知宏教授による「折る・詰む・編む かたちがつなぐSTEAM協働」でした。
先生は、小学生の頃に折り紙作家の前川淳さんによる『悪魔』から影響を受け、折り紙や建築に興味を持ち形態(かたち)と機能(はたらき)の関係を理解したいと考えるようになったそうです。
機能から形態を導き出す作業は「設計」です。
逆は「かたちをよむ」でしょうか・・・適切な述語が思いつかないのですが。
「折る」とか「しわを作る」とかは日常にありふれています。
紙や布を折ったり服の袖にしわが寄ったり焼き魚の皮が身が縮むことでしわで模様ができたりします。
昆虫が羽化するときに縮まっていた翅が広げられたり、ヒトの大脳の表面のしわもその例として挙げられます。
1枚の紙から、しわを利用して立体にするのが折り紙といえるでしょう。
小学校の図工の延長に数学(幾何学)や建築学や美学があるそうです。
タンパク質もアミノ酸の鎖(線状)から自発的に立体構造を作り細胞の構造に寄与し機能を担っています。
https://www.youtube.com/watch?v=vwFhqnGAyxM
舘先生の動画を紹介しておきます。
きっとビックリしますよ。
ぜひ見てみましょう。
次回「多角的に史実を見る:北アフリカ植民地史研究の現場から」
講師:渡邊 祥子(東京大学 東洋文化研究所 西アジア研究部門・准教授)
以下講義概要です
この報告では、第一次中東戦争(1948─49年)の際のチュニジア人義勇兵運動を題材に、チュニジア・ナショナリスト指導者の視点、 フランス・イギリス当局の視点、義勇兵たちの視点からどのような史実が見えてくるか検討する。
民地史研究で用いる多様な史料を紹介し、歴史を研究する楽しさと難しさを学ぶ。
世界史選択でなくてもイスラエルとパレスチナの紛争について理解する一助になるかもしれません。
【ご案内】県立所沢北高等学校学校公開について
保護者の皆様
地域の皆様
日頃より本校の教育活動にご理解、ご協力を賜り誠にありがとうございます。
さて、本校では、添付資料のとおり授業公開を実施いたします。
保護者・地域の皆様にご覧いただければ幸いです。
つきましては、ご多用の折とは存じますが、ご参観いただきたくご案内申し上げます。
No61 東京大学One Earth Guardians公開シンポジウムに参加してきました。
10月7日(土)に、東京大学本郷キャンパスで開かれた「ネイチャーポジティブな未来へ ~人の暮らしと生物圏の折り合いをつけるためには~」をテーマにしたシンポジウムに参加してきました。
モデレーターは東京大学大学院農学生命科学研究科教授の髙橋 伸一郎農学博士でした。
この活動は、東京大学農学部の取り組みでOne Earth Guardians育成プログラムという活動の一環で行われました。
人類は700万年前にチンパンジーなどとの共通祖先から別れて以来、微生物、植物、動物、鉱物、水など地球上のあらゆる「もの」を利用して生きながらえてきましたが、ヒトを含めた生物の共存共栄のため、かつて地球上の生物資源を利用することで起こした問題を俯瞰的に洗い出し、解決していくことが「農学」の使命だそうです。
その問題解決を「人間中心」に考えていいのか。
例えば、トキや希少生物は絶滅させないようにするが、天然痘やコロナのウイルス(ウイルスを生物ととらえていいかは議論がありますが)は根絶させていいのか。
ヒトの立場でホモサピエンスが永続するような方針で地球の環境を考えていいのか。
などなど自分事として考えて行動する必要があるとのことです。
分からないから、迷っているから、じっくり考える。
自分の狭くて浅い考えでは解決できないので調べる学ぶ、まず巨人の肩の上まで登りましょう。
少なくとも登る努力をしましょう。
そうすれば登ろうとすると見える風景も変わるかと。
写真は会場での様子です。
参加した全員が意見を表明しました。
後ろに立っている方がモデレーターの髙橋先生です。
過去にはNHK高校講座の生物基礎に出演していた方です。
2週間後の21日には農学部公開セミナーが予定されています。
中間考査の真っ最中ですが、希望者は生物室前の名標に名前を書いてください。
No60 東京大学 金曜講座 受講報告
10月6日(金)の金曜講座は、総合文化研究科准教授の松井裕美先生による講義でした。
テーマは「フランス美術を通して知る西洋の文化・歴史・思想」ということで、19世紀や20世紀の主にフランス絵画をふんだんに用いた資料も準備されていました。
世界史選択の生徒など資料が欲しい場合は申し出てください。
講義では、まず美術史についての話がありました。
「どの作品に価値があるのか」という品定めではなく、「なぜその作品に価値が認められるようになったのか」という価値形成の変遷と要因の分析が大切だとのことです。
例えば、第二帝政期の普仏戦争の勃発やパリ・コミューン結成の直前に、古い貴族の仮装をして野外で食事する男女の様子を印象派風に描くことで何を伝えたかったのかであったり、狩りのいでたちを描写し、髪をなびかせることで何を暗示したかったのかなどの視点から、画家が伝えようとしている「何か」にどのような歴史的・社会的・政治制度的背景があるのかを読み解くのだそうです。
んーなかなか深いですね
次に西洋から見た憧れの東洋、魅惑のオリエントという話題がありました。
東方の世界を理想化し、変化のない・時間のない永遠の習慣と儀式の世界としてオリエントは描かれているそうです。
西洋人あるいは男性性がその支配への欲望を見透かされないようにニュートラルに描かれていると解釈できるのだそうです。
んーこれも深い読み解きですね。
浮世絵や日本画家とのつながりについても触れていました。
黒田清輝は法律家を目指してフランスに留学後画家に転向した教育者・美術行政家です。
黒田自身の作品や印象派との関連あるいは浮世絵との類似性など、どちらがが「本家」か「本歌取り」はどこまでさかのぼれるかという面白い問題提起でした。
美術史を学ぶことは、19〇〇年に何が起こって、どのような人物や仕組みがどのように変遷したかという、年代や固有名詞を明らかにすることが最終目的ではなく、その時期に特定の背景を持った人物が、ある顕著な特徴を持った絵画・作品を制作したことの「歴史的な意味」について考えを広げることが大切なようです。
現代美術はよくわからないと言われますが、その問いに松井先生は「答えではなく問を引き出すから」と答えました。
詳しく知りたい人は、
”現代アートはどうして難しいの?→松井裕美|素朴な疑問vs東大”
上記の検索ワードで探してみてください。
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00210.html
講義を受けながら、わたしは小学生の低学年の頃にテストのプリントだったかと思いますが、裏の白紙に戦車の絵をずっと描いていたことを思い出しました。
あの時のわたしは何を思い、何を表現したかったのでしょうか。今となっては謎ですね。