No26 東京大学農学部公開セミナー参加報告
去る令和5年6月17日(土)に東京大学弥生講堂・一条ホールで開催されたセミナーに参加してきました。
講義50分+質疑応答という形式で3つの講義が行われました。
①生物・環境工学専攻富士原和宏教授による『演題:植物へのLED光照射と研究用LED光源システム』
1秒程度以下の短い周期で点滅を繰り返す光をパルス光と呼びます。
このパルス光については不思議な誤解(都市伝説)が国内で蔓延しているそうです。
パルス照射を行うと照射光点滅中の平均の光の強さが連続光と同じであっても、連続光照射よりも光合成速度を大きくすることができるという「誤解」だそうです。
研究用光源システムを開発の内容を話している時の先生の楽しそうな表情は(失礼ですが)工作大好き少年のようでした。
研究者のこだわりというか、美学を感じました。
②東京大学農学部附属生態調和農学機構矢守航准教授による『演題:光を操り 食糧難に立ち向かえ!』
先生が研究している「農場」は田無駅とひばりが丘駅の間にあり、近いので距離的にも親近感を感じました。
この講義でも目からウロコの話がありました。
緑色の光はクロロフィルの吸収効率は悪い(透過したり反射されるため)ので、赤と青の光が主に光合成に利用されている・・・のではなく。
葉の柵状組織や海綿状組織で複数回反射されるため、緑の光も7割近く有効に利用されているようです。
んーそうでしたか。
また、植物工場では土を使わずに栽培していますが、下からも光を当てて栽培すると下の葉(下位葉)の老化が進まずに収穫できるそうです。
透過しやすい緑色の光は逆に中まで入り込みやすいので有効だそうです。
まさに逆転の発想ですね。
③東京大学水圏生物科学専攻岡田茂准教授による『演題:光から”石油”を作る植物プランクトン』
ここまでの講義ですでに「おなかいっぱい」になりましたが、この講義もスリリングなものでした。
ざっくりいうと、現在の石油は古代の生物(植物)の死骸が高温高圧で油になったものです。
では、現在の植物プランクトンが光合成して炭化水素を作って、それを利用できるようにしたらエネルギー問題の一部は解決できるかもしれません。
先生の研究によると、石油を作るBotryococcus brauniiなる生物(微細藻類)が発見されており、この生物は脂肪酸からなる油をつくるそうですが、自身の細胞外に分泌される上、つくった石油を当の藻自身は利用しないとのことです。
これは、謎だそうです。
ですから、余計なことをしているので微細藻類としては極端に分裂速度が遅いのだそうです。
なぜ遅いかもよくわかっていないそうです。
うんうん。
この生物は何のために、石油を作り出しているのだろうか。
石油を作り出すことと分裂速度が遅いことには関連性があるのだろうか。
知りたいことは山ほどあります。
まだまだ未開拓の研究分野は君たちを待っていますよ。
今日の午後は、文学部の公開講座です。
小西いずみ 准教授による『日本語の方言 ─過去・現在・未来─』
先生は東京大学 大学院人文社会系研究科 国語研究室国語研究室です。
国語が大好きな生徒のみなさん行ってみませんか??